金正日総書記の死が報じられてから、テレビのニュース、ワイドショーは関連記事や解説を流し続けている。朝鮮半島の政治状況の変化は、沖縄の基地問題にも影響を与える。今日、那覇空港では緊急発進しようとした航空自衛隊のF15戦闘機が滑走路をはみ出し、民間機の欠航や大幅遅れをもたらすという事故を起こしている。まったく何をやっているのか、と思うのだが、これから朝鮮半島情勢の不安定化を強調して、自衛隊強化や辺野古新基地建設を後押ししようという動きが生まれないか、注意しなければならない。
12月19日付県内紙は、普天間基地「移設」に向けた環境影響評価書について、政府・防衛省が26日にも沖縄県に提出する方向で最終調整していることを報じている。また、20日にはワシントンで玄葉外相とクリントン国務長官の会談が行われる。
〈米議会が普天間移設とセットになる在沖米海兵隊のグアム移転関連予算を全額削除したことを踏まえつつ、辺野古移設の現行計画を堅持することで認識の一致を図る〉(12月19日付琉球新報)という。
日米両政府ともに〈辺野古移設の現行計画〉に固執している。日本政府・防衛省は、逆境になればなるほど米政府に媚びを売って、仕事納め直前に評価書を提出するという卑劣な手を使おうとしている。評価書が提出されれば、知事は90日以内に意見書を返送しなければならないため、年末・年始を返上して対応する職員も出るという。
政府・防衛省は、田中前局長の停職処分で問題の収拾を図ったつもりかもしれない。しかし、評価書提出は「犯す前に言うか」という田中前局長の暴言を実行に移すものであり、何も反省しないで居直ることを示すものだ。米軍人・軍属の交通事故について地位協定の運用改善をどれだけ示したところで、評価書の提出強行は政府が自賛する「成果」を吹き飛ばし、沖縄に対する強権的姿勢をむき出しにしたものとして、怒りと反発をさらに呼び起こす。
普天間基地問題は、「県内移設」を条件にしたことで、ボタンを掛け違えたのだ。そこを是正しない限り、問題の解決はあり得ない。東アジア情勢の変化がどうあれ、日米両政府が政治・軍事上の目的を果たす手段として沖縄をいつまでも利用できると思ったら、大きな間違いだ。