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天皇の世替わり騒動について書いたエッセー

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 5月1日付沖縄タイムスに「世代わりを問う 天皇制と沖縄」というシリーズで文章を書かせてもらった。〈利益目的のお祭り騒ぎ/騒動の裏で新基地建設 強行〉という見出しが付けられた。以下に全文を載せるので、ご一読願いたい。

 

 新元号の発表がエープリルフールの4月1日で新天皇の即位がメーデーの5月1日。まるで冗談のような日程の組み方だが、その間に統一地方選挙があったことを見れば、ああそういうことか、と納得がいく。

 安倍晋三首相からすれば、天皇の代替わりに関連する一連の行事を利用し、政権への支持率を上げて選挙を優位に戦うことが、何より大事だったのだろう。

 ただ、その目論見は塚田一郎元副国交相の「忖度」発言や、桜田義孝前五輪担当相の「復興以上に議員が大事」発言などによって、思い通りには果たせなかった。沖縄では衆議院3区の補欠選挙で、辺野古「移設」容認を打ち出した候補者が敗北する結果となった。

 しかし、天皇(制)を利用して人気取りを図る安倍政権の党利党略、私利私欲は選挙にとどまらない。

 4月1日、「令和」という文字を掲げて記者会見した菅義偉官房長官の姿は、30年前に「平成」を発表した小渕恵三元官房長官のそれに重なった。

 新元号発表の写真や映像は繰り返し取り上げられ、歴史に残る。菅官房長官もそれを意識して悦に入っただろうが、いまや「令和おじさん」と呼ばれて、ポスト安倍の首相候補にまで躍り出た。

 安倍首相本人も、わざわざ背後のカーテンを赤色に変えて記者会見を行い、自らを前面に押し出した。そこにも、歴史に名をとどめたい、自らの政権を強化したい、という欲望が露出していた。

 安倍政権による天皇(制)の政治利用を支えているのが、テレビ、新聞、週刊誌などの報道姿勢だ。天皇夫妻の日々の動向を報じ、平成を振り返ると称して、似たような企画の番組、特集を繰り返している。何のことはない、マスコミもまた天皇(制)を利用して、視聴率や部数を上げようと躍起になっているのだ。

 新旧の元号を使ってひともうけしようという者も多い。政治家、マスコミから商売人まで、表向きは天皇夫妻や皇室を持ち上げながら、その裏では自分たちの利益を上げるために、お祭り騒ぎを演出しているだけではないか。

 新天皇即位を5月1日に入れ、10連休にしたのも経済効果を優先したからであり、安倍首相はそれで国民受けを狙ったのだろう。

 だが、天皇家からすれば、かつての労働運動を支えた社会主義は不倶戴天の敵だし、皇居前広場で起こった「血のメーデー事件」という歴史もある。そういう日に即位をぶつけるとは、安倍首相の悪意すら感じる。

 当の新天皇・皇后には厳しい日々が待っている。特に皇后となる雅子さんは、美智子前皇后と比較されることで、大きなプレッシャーを受けるはずだ。皇太子妃の時代から精神的に不安定で公務を長期間休んでいた彼女が、皇后としての公務を同じようにこなせるか。もしこなせなかった場合、マスコミからどれだけたたかれるだろうか。

 新天皇夫妻だけではない。秋篠宮家もプレッシャーを受けている。特に長女の真子さんは、恋人の小室圭さんが母親の金銭トラブルをめぐって週刊誌やテレビのワイドショーでさんざん叩かれ、傷つけられてきた。最近は姉を気遣った妹の佳子さんまで、週刊誌で攻撃されているありさまだ。

 若い2人が好き合っているなら、快く祝ってやればいいものを。足を引っ張って売り上げを伸ばそうとしているマスコミの醜悪さよ。その背景には、皇族の数が減少していることによる女性宮家創設の問題が絡んでいる。

 しかし、いくら皇室典範を改定して皇族を増やしても、この時代に天皇制を維持していくこと自体が、多くの無理を抱えているのだ。

 天皇家に生まれたということで自由に生きる権利やプライバシーを奪い、いくらかの特権と引き換えに憲法で保障された基本的人権を奪う。こんな不自然かつ愚劣な制度をいつまで続けるつもりなのだ。

 沖縄からすれば天皇は、明治政府によって琉球国が滅ぼされ、併合されたことによって無理やり関係づけられたものだ。ヤマトゥ(日本)にとって沖縄は近代に入って手に入れた新たな領土であり、沖縄戦や敗戦後の扱いに示されるように、いざとなれば切り捨てる「トカゲのしっぽ」にすぎない。

 退位した明仁・美智子夫妻は沖縄に何度も足を運んだが、昭和天皇の戦争責任や「天皇メッセージ」に触れることはなかった。「慰霊の旅」という演出でむしろ、沖縄を切り捨てた昭和天皇の問題を曖昧にしてきた。

 一方で、沖縄に進出した自衛隊が勢力を広げ、先島地域にまで拡大していくことを支えてきた。明仁・美智子夫妻の天皇・皇后としての最後の沖縄訪問は、「琉球処分」の3月27日と与那国島の自衛隊発足記念日の28日に合わせて設定され、二人の役割を象徴していた。

 「令和」を最後の元号とし、天皇制という遺制は一日も早く終わらせた方がいい。その前に天皇・皇后をはじめとした皇族の公務を大幅に減らし、名誉総裁などと祭り上げて権威を利用するのをやめるべきだ。

 天皇の代替わり騒動の裏で、辺野古では沖縄の民意を踏みにじり、新基地建設が強行されている。「天皇メッセージ」は今も生きている。


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