9月6日付琉球新報朝刊に〈自民党三役が「常駐」/佐喜真氏陣営、異例の対応〉という見出しの記事が載っていた。以下に全文を引用する。
30日投開票の知事選に向け、県政奪還を狙う自民党が幹部を続々と県内に送り込んでいる。4日には竹下亘総務会長が来県しているが、自民関係者によると、竹下氏は選挙を終えるまで那覇市内にある佐喜真淳氏陣営の事務所に常駐する予定。党三役が約1カ月にわたって沖縄に滞在する異例の対応を取っている。
5日には塩谷立選挙対策委員長が今知事選に向けて2度目の来県をし、各地域の支部などを回って佐喜眞氏への支持を呼び掛けたほか、佐喜真氏の事務所を「陣中見舞い」(自民県連幹部)に訪れた。二階俊博幹事長が3、4日、佐喜真氏の応援のために来県していた。
以上、引用終わり。
自民党三役が約1カ月にわたり常駐し、選挙の陣頭指揮を執るのだから、まさに自民党中央丸抱えの選挙態勢と言っていい。2月の名護市長選挙もそうだったが、自民党幹部が続々とやってきて県内企業や団体を回り、業界票をまとめる一方で、公明党・創価学会も中央から幹部を送り込んで指揮を執った。
安倍自公政権主導で県知事選挙が行われ、そのおかげで当選しても、恩義を受けた佐喜真氏が政府にものを言えるわけがない。安倍首相や自民党中央の顔色をうかがい、忖度して自ら操り人形になる。そんな県知事になることが佐喜真氏の望みなのか。
佐喜真氏は普天間基地の返還を主張する一方で、辺野古新基地建設については態度を曖昧にしている。宜野湾市長選挙ならそれですまされるかもしれない。しかし、県知事選挙に立候補しようとする者は、名護市民の生活にも責任を負う。普天間と辺野古を切り離し、宜野湾市民の安全は大切だが、名護市民の安全はどうでもいい、という態度を続けるつもりか。
沖縄島北部・ヤンバルは人口が少ないから、そこに海兵隊基地を集中すれば、反対の声も小さくなる。中南部の都市部住民の関心は低くなり、沖縄への基地の固定化が容易になる。それが日本政府の本音だ。沖縄県民を分断し、沖縄への米軍基地集中化という差別政策を、佐喜真氏は沖縄の中から支え、ヤンバルの住民を犠牲にしようというのか。
いや、犠牲になるのはヤンバルの住民だけではない。辺野古新基地の完成はいつになるか分からないし、仮に完成しても普天間基地が返還されるとは限らない。広大な嘉手納基地は沖縄の中心部に居座り続ける。そこから派生する事件、事故をめぐって政府と対応するときに、佐喜真氏が県民の立場から交渉できるだろうか。
辺野古の新基地建設では、米国の基準で高さ制限に引っかかる建物として、久辺小学校や久辺中学校が挙げられている。辺野古新基地は米国では許されない計画であり、安全と人の命を等しく考えるなら沖縄でも許されない。佐喜真氏は辺野古の子どもたちは危険にさらされてもいいと考えているのか。
事務所にいすわる自民党の三役から指示を受け、その通りに発言し、選挙運動を行う。それが勝利の方程式なら、それは政府の操り人形を生み出す方程式でしかない。どこに沖縄の主体性があるのか。佐喜真氏はそれで満足なのだろうか。