高江のヘリパッド(オスプレイパッド)建設をめぐって、高江住民の伊佐真次さんに対し沖縄防衛局が通行妨害禁止を求めていた裁判の控訴審判決が25日に出た。すでに報じられているとおり、沖縄防衛局の主張を全面的に認めた不当な判決である。基地問題に関しては司法の独立などあったものではなく、福岡高裁那覇支部は沖縄県民に犠牲を強要する政府の尻押し機関でしかないようだ。
自分と家族の生活が脅かされようとするとき、それを防ぐために行動するのは当然のことだ。実際に高江に足を運んでN4のヘリパッド建設現場の状況を見れば、伊佐さんが建設反対の行動に立ち上がらざるを得なかったことがよく分かる。沖縄の基地反対運動は、自分たちの生活を守るという切実な立場からとりくまれている。そういう住民を裁判に訴える国と沖縄防衛局の姿勢は、司法の力を使ってでも米軍基地の負担と犠牲を強要しようとするものであり、これは沖縄県民全体に対する挑戦である。断じて許すことはできない。
今回の判決で今泉秀和裁判長は、〈国の訴えはヘリパッド建設反対活動の萎縮目的と認められない〉(6月26日付琉球新報電子版)としている。しかし、自らが下した判決が沖縄県民の心理に与える影響を、今泉裁判長は否定できるのか。建設反対運動に参加したら、自分も訴えられるのではないか、訴えられたら裁判で負けるのではないか…。裁判の報道に接して、そう考えた県民は少なくないはずだ。それこそ萎縮効果であり、国・沖縄防衛局の立場に立って判断している今泉裁判長自身が、〈萎縮目的〉を現実のものにしてスラップ裁判を成立させているのだ。
週が開ければ7月となり、高江のN4とN1でヘリパッド建設工事が再開される。今夏にはMV22オスプレイの追加配備がなされようとしており、建設工事が進めばやんばるの上空に飛来するオスプレイが激増する。普天間基地、キャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブ、北部訓練場、伊江島補助飛行場を結んで24機のオスプレイが飛び交うのである。そういう状況を黙って受け入れるわけにはいかない。今泉裁判長は政府に気に入られる判決を出して、いずれ沖縄からよそへ転勤していく。しかし、この島で生きる者は、オスプレイをはじめとした米軍の訓練にずっと脅かされる。国や沖縄防衛局の裁判を利用した脅しに屈することなく、ヘリパッド建設工事に反対していきましょう。
7月21日に参議院選挙が行われる。沖縄では選挙区で3人、比例区で4人が立候補予定と報じられている。高江控訴審判決の直後であり、かつヘリパッド建設工事の最中に行われる選挙である。普天間基地問題と並んで、高江のヘリパッド建設問題も参議院選挙の重要な争点として位置づけられるべきだ。各候補者は高江ヘリパッド建設に対する態度を明確に示すべきであり、メディアや市民団体主催で行われる討論会などでも、主催者は争点として積極的に問うてほしい。
代替施設の建設が返還の条件となり、そのために住民の生活を脅かし、やんばるの貴重な自然を破壊して工事が進められる。この点において普天間基地の「県内移設」も高江のヘリパッド建設も同じである。普天間基地については「県外移設」を打ち出したとして、では高江のヘリパッド建設に関してはどうなのか。立候補者の基地問題に対する考えは、高江のヘリパッド建設に対する態度でこそ明らかとなる。普天間・辺野古・高江は一つながりの問題であり、高江を問うことで普天間基地問題に対する立候補者の本音も見えてくる。違いを明らかにして有権者の判断材料とするためにも、高江のヘリパッド建設問題は重要な争点となる。