5月24日に共通番号制度法案(マイナンバー法案)が参議院本会議で可決、成立した。これまで住基ネットに反対する市民ネットワーク沖縄(反住基ネット沖縄)の会員として、同法案に反対してきたのだが、残念ながら現在の国会の状況では、審議を十分に尽くすことさえできなかった。
共通番号制度についてはこれまで、国家による個人情報の一元管理や情報流出、成りすまし犯罪、費用対効果、所得把握の困難さ、IT業界と官僚・政治家の利権など、多くの問題点が指摘されてきた。制度が開始されれば、それらの問題はいよいよ現実のものとなる。社会保障分野での手続きの簡素化など利便性が強調されるが、社会保障費の抑制・削減が進められる下では、手続きの厳正化によってむしろ受給者減らしの道具に利用されるだろう。
共通番号制度は、安倍政権が進めている憲法改定や秘密保全法制定の動きとの関連でとらえ返す必要がある。国家による統治機能強化や情報管理が進められる一方で、市民の基本的人権がはぎ取られ、情報開示(知る権利)や表現の自由が抑圧されていく。そういう社会で共通番号制はどのような威力を発揮するだろうか。同制度の適用範囲が広がり、民間利用も行われるとき、膨大な個人情報が国家機関によって悪用され、市民の監視、統制、弾圧の手段に利用される危険性に注意したい。
サイバー空間が「第5の戦場」と言われる時代だ。共通番号制度のシステムも諸外国の軍隊、情報機関の標的とされるだろう。企業の情報流出も相次いでいる。そういう時代に国家が個人情報の一元管理を拡大することの問題が、もっと論じられるべきだ。法案が成立しても、指摘されてきた問題が現実のものとならないように、同制度を市民が監視、批判し続けることが大切である。