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Channel: 海鳴りの島から
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書評/ニコラス・スカウ『驚くべきCIAの世論操作』(インターナショナル新書)

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 以下の文章は、『監視社会ならん!通信』30号(5月10日発行)に掲載されたものです。

 米国のトランプ大統領が、新型コロナウィルスは中国武漢市のウィルス研究所から流出した、という発言をくり返している。 

 世界最大の感染者、死者を出している米国の現状は、トランプにとって大統領選挙で大きなマイナスとなる。中国にすべての責任をおっかぶせることで、窮地を脱しようという思惑が透けて見える。

 この種の陰謀論が流布されるときには、CIA(米国中央情報局)の動きに注意が必要だ。メディアやインターネットを通して世論操作を行うのは、CIAの常とう手段だからだ。

 本書はCIAによる世論操作の実態を、具体的な事例を通して明らかにしている。ベトナム戦争やコントラ支援、イラク戦争、グアンタナモ収容所などが取り上げられているが、たんにCIAが米国メディアを取り込んで操作しているだけではない。

 「ワシントンポスト」や「ニューヨークタイムズ」などの記者、編集者の中にも、CIAから情報を得るために癒着し、時の政権にとって不都合な事実を隠蔽する者たちがいる。

 一方で、地道な調査報道で事実を明らかにしようとする反骨の記者たちが、CIAだけでなく大手のメディアにも攻撃され、書く場を奪われていく実態も記されている。

 CIAによる世論操作は、報道だけでなくハリウッド映画やテレビドラマなどを通しても行われている。フェイクニュースが飛び交う時代に、新型コロナウィルスへの恐怖、不安を利用した世論操作に注意したい。

 以上、書評の引用は終わり。ニコラス・スカウの著書に次の一節がある。文中の〈ワシントンの報道陣〉を日本の報道陣に、CIAを日本の警察や検察に置き換えれば、そのまま通用するだろう。

〈ひそかに行われていることを探り出すことは、もちろん国家安全保障問題を取材する記者なら誰でも第一の使命だ。だがそうした秘密にアクセスするために、スクープに飢えたワシントンの報道陣は政府の情報機関に対して常時服従し、頭を下げる関係にならざるを得ない。当局筋の機嫌を損ねるような記者は痛い目に遭うことになるのだ。なぜならすぐにのけ者にされていることに気づかされ、この分野を担当するジャーナリストたちにとって日々の糧とも言うべき、リークされる機密情報の分け前にもあずかれなくなるからだ。

 要するにこういうことだーー今やCIAはかつてのように報道機関の記者を雇い上げ、報酬を支払ってやる必要はない。そうする代わりに、CIAは単に選り抜きのエリート記者のグループとの間に、精緻に織り上げられた種々の関係を保つだけでいい。その記者たちは職業人として生き抜いていくために、公安国家にまったく依存しているのである〉(236~237ページ)

 権力に取り込まれることなく、厳しく一線を引いて、地道に調査報道を重ねている記者もいるだろう。だが、実際のところ、そういう記者はどれだけいるのか。

 辺野古新基地問題に関しても、これはという報道がどれだけなされているか。工事が止まっている今こそ、これまで問題となってきたことを改めて取材、調査、検討して掘り下げ、記事にすべきではないのか。

 現場の動きがなければツイッターも更新されないようでは情けない。

 


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