16日のフジテレビの番組で野田佳彦首相が、MV22オスプレイの沖縄配備について、米政府の方針だから拒否できない旨の発言をしていた。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-193982-storytopic-3.html
一国の首相が情けない発言をよくもやったものだ。オスプレイ配備は事前協議の対象外と言いたいのだろうが、沖縄県民の声に耳を傾ける姿勢があれば、そういう形式論では片付けられないはずだ。沖縄ではオスプレイ配備反対の県民大会にむけ準備が進んでいる。野田首相の発言はそれを最初から切って捨てるものだ。
また、テレビで「拒否きない」と公言するのは、日本は米国の属国でございます、と世界に自己暴露したに等しい。米国の言うことを聞いてればうまくいく、逆らうとろくなことはない、という植民地根性、隷従意識が骨の髄まで染みこんでいるのだろう。しょせん野田首相にとっては、オスプレイ配備も原発再稼働と同じく、米国や財界の意向がすべてであり、地域住民の安全など二の次というわけだ。
一方で、かつて『NOと言える日本』を共著で出した政治家がいる。石原慎太郎東京都知事だが、4月に米国ワシントンのヘリテージ財団で、東京都が尖閣諸島を購入する意向であることを発表した。わざわざワシントンで発表する姿には、俺の後ろには米国があるんだぞ、という虎の威を借る狐ぶりが見え見えだった。
日中関係を悪化させて東アジアにおける米軍の存在を強調し、軍事予算を確保したいという米国軍産複合体の意図と、尖閣諸島問題に火をつけ、排外的ナショナリズムを煽ることで自らの存在感を示したい、という石原知事の意図がかみあったのだろう。尖閣諸島問題はいま、沖縄へのオスプレイ配備の口実としても利用されている。
沖縄には、中山義隆石垣市長のように石原知事に同調している政治家もいる。しかし、尖閣諸島周辺で軍事的緊張が生じれば、真っ先に打撃を受けるのは八重山・宮古の観光や産業振興である。その被害は、朝鮮の人工衛星打ち上げを利用したPAC3配備時のそれと比較にならない大きさになりかねない。沖縄を利用しようとするヤマトゥの政治家に踊らされるのは、愚の骨頂でしかない。
日本の首相、首都の知事の対米隷従ぶりは、米軍基地が集中し、尖閣諸島がある沖縄には深刻な事態を発生させる。仮に普天間基地に配備されたオスプレイが墜落事故を起こしたり、尖閣諸島をめぐって日中間で紛争が生じれば、実害をこうむるのは沖縄県民である。日本の安全保障だの領土保全だのとご立派なことを口にしているが、野田首相や石原知事の発言を見ていると、我が身は安全なところに置いて負担は沖縄におっかぶせ、対米隷従と領土ナショナリズムを煽ることで私益を拡大したいだけにしか見えない。
もう一人、対米隷従ぶりをつとに知られた前原誠司民主党政調会長が、ここのところオスプレイ配備計画の再検討を言挙げしている。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-193885-storytopic-3.html
前原政調会長の主張は、オスプレイ配備は前提として時期を遅らせてほしい、というだけのことだ。それも主眼は「日米同盟」の安定を維持することにある。
かつて前原政調会長は、普天間基地「移設」問題に関し、島袋吉和前市長をはじめとした名護市の「移設」推進派と密談を重ねたことがある。また、沖縄担当大臣や外務大臣を務めた前原政調会長なら、オスプレイの沖縄配備もとっくの昔に知っていたはずだ。しかし、県民の立場に立って配備反対を口にしたことが、これまでに一度でもあっただろうか。
しょせん、前原政調会長も、沖縄県民の安全は二の次にして、米軍の基地運用がうまくいくようルース駐日大使に、慎重にやってくれ、と進言しているにすぎない。2010年9月の中国漁船衝突事件で強硬姿勢を示し、尖閣諸島をめぐる日中対立の火付け役を果たしたことも思い起こせば、オスプレイ配備と尖閣諸島問題、普天間基地の辺野古「移設」をうまく組み合わせ、在沖米軍基地の再編強化を進めたい、というのが前原政調会長の本音ではないか。
MV22オスプレイが岩国基地に到着する予定日の24日まで1週間と迫った。オスプレイの陸揚げ反対の現地行動が大きく広がってほしい。