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Channel: 海鳴りの島から
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真部沖縄防衛局長の軽微な処分と防衛省の自浄能力のなさ

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 4月26日に防衛省は、今年2月行われた宜野湾市長選挙に向けて職員に講話を行い、選挙への不当介入を批判された真部朗沖縄防衛局長と、同局職員5人に対する処分を発表した。真部局長に対しては、個人情報の管理等に関し指導監督が不十分、局長講話等の実施に関し職務遂行が不十分などの理由を挙げて訓戒処分。他の職員5人も、個人情報保護や講話対象リスト作成について問題ありとし、注意、口頭注意とした。いずれも軽微な処分であり、公職選挙法や自衛隊法については「違反する事実は確認できない」としている。

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2012/04/26b.html

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-190531-storytopic-3.html

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-190558-storytopic-25.html

 しょせんは身内をかばい立てする防衛省の自己保身丸出しの処分であり、自浄能力のなさをさらけ出している。田中聡前局長に続いて真部局長までも更迭処分となれば、ただでさえ普天間基地の「移設」問題が行き詰まっているのに、日本は何をしているのだ、とアメリカの怒りを買う。それだけは避けたい、という政治的思惑が先行したのだろう。26日は日米共同文書発表の前日である。
 26日はまた、民主党元代表・小沢一郎議員の東京地裁判決が出る日でもあった。マスコミや世間の関心はそこに集中するので、真部局長の軽微な処分への関心は薄れる。そういう姑息な計算も見え見えで、いかにも防衛省らしいやり方だ。だが、そういうごまかしで沖縄県民が納得し、防衛省・沖縄防衛局への見方を変えることはない。むしろより一層、不信と反発は強まるはずだ。

 問題となった真部局長の職員への講話は、今年2月の宜野湾市長選挙前と2010年9月の名護市議会議員選挙前(講話は8月)の2回行われている。両市に共通するのは普天間基地の名護市辺野古「移設」問題であり、「移設」事業者の代表である真部局長の講話が、「移設」に有利な政治環境を生み出そうという思惑から設定されたのは明白である。
 講話を行うに際して、特定の候補者への支持を呼びかける愚を、真部局長が犯すはずがない。公平性を装って候補者の主張を当分に紹介し、服務・規律違反がないようにと職員への注意を付け足すことで、あらかじめ逃げ道を作っている。その上で、自分の本意は以心伝心で職員に伝わる、と読んでの講話であり、すべては計算ずくで行われていることだ。
 しかし、不当な手法はぼろを出す。真部局長の講話は内部告発によって暴露された。沖縄防衛局の職員の中で、真部局長の計算ずくの講話が持つ政治的意味が、広く理解されていたからこそ内部告発が起こったのだ。告発者は大きなリスクを背負う。それでもあえて内部告発したのは、真部局長の選挙介入の不当性や職員への圧力が、それだけ大きかったことを証明している。

 宜野湾市長選挙前の講話は、沖縄防衛局長という地位を利用して、勤務時間中に沖縄防衛局内で行われている。しかも、リストは職員だけでなく家族や親族の続柄、数まで含めて作成されている。そこまでやらなければ服務・規律が保てないほど、沖縄防衛局の職員は選挙違反をやりかねない状態だったというのだろうか。
 そんなことはあるまい。選挙に際して公務員としてやれること、やれないことは職員も知っているはずだ。自衛隊法、公職選挙法に抵触する可能性があってもなお、選挙への不当介入を考えたのは、真部局長の方である。そこには真部局長の強引さとともに焦りがあった。

 昨年12月28日の午前4時過ぎに沖縄防衛局は、普天間基地の辺野古「移設」に係る環境影響評価書を、沖縄県庁に持ち込んだ。真部局長みずから陣頭指揮を執ったその異常な行動には、真部局長の強硬な姿勢と同時に焦りが見られた。県庁の内と外の座り込み行動によって、真部局長はそこまでやらなければならないほど追いつめられていたのだ。宜野湾市、名護市の選挙に際しても同様である。
 その強引さと焦りは、沖縄県民の圧倒的多数が普天間基地の辺野古「移設」に反対しているのに、それを無視して「移設」を強行しようとする政府・防衛省・沖縄防衛局の姿勢から生じている。政府・防衛省はこれからゴールデンウィークに入るので、真部局長の処分問題もこれでうやむやにできると考えているだろう。しかし、県民の声に耳を傾け、「県内移設」という方針を改めないかぎり、誰が沖縄防衛局長になろうと、同じように追いつめられ、焦りにかられて愚行をくり返し、自滅していくだけだ。

 


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