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Channel: 海鳴りの島から
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「ミサイル」防衛騒ぎの愚かさと、その裏で進むもの

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 北朝鮮の人工衛星打ち上げが13日午前7時39分頃に行われ、150?ほど上空で爆発し、破片が韓国西方の黄海に落下したと報道されている。テレビでは連日、北朝鮮ウォッチャーだの軍事評論家だの石破茂氏のような防衛族議員だのが出てきて、打ち上げは14日と予測する声が大多数だった。13日と予測した人はどれだけいただろうか。

 人工衛星打ち上げに対する日本政府の情報把握・発表は遅れた。沖縄では全国瞬時警報システム(Jアラート)や緊急情報ネットワークシステム(エムネット)などで行政機関に情報が伝えられるとされていたが、何の役にも立たなかった。

http://www.okinawatimes.co.jp/article/2012-04-13_32431/

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-189919-storytopic-1.html

http://www.qab.co.jp/news/2012041334946.html

http://www.okinawatimes.co.jp/article/2012-04-13_32428/

 PAC3の沖縄配備に数十億円単位の金が浪費されていると思うが、そのあげくがこの様である。北朝鮮はもとより、中国やロシアの軍部・情報機関も日本の動きに注目しているはずだ。最初から実害が出ないのは分かっているのに大騒ぎして、公開されているロケットの発射にも、日本は対応能力がないことを世界にさらしているのだから、愚の骨頂としかいいようがない。

 それでも、自衛隊にとっては米軍と協力して大規模な訓練を行い、先島への部隊配備などの布石を打てたから大きな意義があったのだろう。県庁や那覇市、宮古島市、石垣市などの役場庁舎に自衛隊員が送り込まれているが、彼らはたんなる連絡係ではなく、役所内の協力・非協力状況や職員の動きなどを観察し、情報を収集する役割も担っていることに注意する必要がある。
 転んでもタダでは起きず、焼け太りを狙うのが官僚や政治家の常である。Jアラームやエムネットが役に立たなかったことを居直り、システム改善のためと称して予算の増額を求め、政府・地方行政・自衛隊のより緊密な関係作りを強調してくるのは目に見えている。それに従順に乗せられてはならない。数分で飛来する「ミサイル」に対応して住民を保護することの不可能性、困難さこそ直視すべきだ。

 今回の北朝鮮の人工衛星打ち上げを利用したPAC3の沖縄配備は、動的防衛力構想に基づく広域移動訓練であり、先島地域への陸自部隊配備をはじめ、沖縄の自衛隊強化を実現する地ならしである。沖縄戦から67年、施政権返還から40年が経ち、沖縄戦の体験からくる反自衛隊感情が薄らいだことをふまえ、政府・防衛省は「国防の空白地域」を埋めると称して、沖縄全体に自衛隊の部隊配備を進めようとしている。
 それは米海兵隊が数千人規模で沖縄から出ていくにしても、その穴を自衛隊が埋めていくということでもある。ソ連邦が崩壊し、冷戦が終結したあと、自衛隊削減の声が広がるのを防ぐために北朝鮮の脅威が強調され、さらに中国脅威論が流布された。北方重視から西方重視への転換、島嶼防衛がいわれ、中国と東シナ海をはさんで対峙する南西諸島の防衛力強化が打ち出された。自衛隊にとってそれは予算と人員の削減を防ぐ手立てでもある。軍隊は組織維持のために常に脅威を作り出さなければならないのだ。
 しかし、戦争において真っ先に狙われるのは軍事施設である。沖縄戦においても、日本軍の重要な軍事拠点となったところが最激戦地となり、住民にも多くの犠牲をもたらした。PAC3部隊や陸自部隊が配備されるから安全と考えるのは、まったくの幻想である。日本政府・防衛省が守ろうとするのは、あくまで領土としての沖縄であり、沖縄県民ではない。それは67年間も軍事基地の被害に苦しみ続けている沖縄県民に対して、政府がどのような態度を取っているかを見れば明らかだ。

 沖縄ではモロッコで起こったMV22オスプレイの墜落事故が大々的に報じられている。これから普天間基地へのオスプレイ配備に反対する県民世論はさらに大きくなっていくだろう。それに対し、政府・防衛省はどのような態度をとるか。沖縄県民の声を聞き入れて、米国政府に対しオスプレイを配備しないように交渉するだろうか。
 野田政権のこれまでの沖縄に対する姿勢を見れば、その可能性はゼロとしか思えない。辺野古への新基地建設や高江のヘリパッド(オスプレイパッド)建設を見ても、「日本本土防衛」のために沖縄の犠牲は当たり前とする姿勢は、野田政権に限らず、沖縄戦以前からつづいてきた日本政府の基本姿勢である。そのような日本政府が進める先島への自衛隊配備、沖縄の自衛隊強化に幻想を抱くことの愚かさを、いくどでも繰り返したい。

 


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