PAC3をライセンス生産している三菱重工業のホームページに、航空宇宙事業本部の「事業本部長メッセージ」が載っている。その中でPAC3について以下のように述べられている。
http://www.mhi.co.jp/aero/introduction/message/index.html
〈ミサイルの分野では、昨年閣議決定した防衛計画大綱の別表に、弾道ミサイル防衛にも使用し得る地対空誘導弾が「6個高射群」全てに配備されることが明記されました。 BMD対処のペトリオットPAC-3システム地上装置が、未配備の3個高射群を含む国内全部隊に早期に装備されることに大きな期待を寄せております〉
2010年12月17日に閣議決定された「防衛計画大綱」では、PAC3が〈「6個高射群」全てに配備されること〉になった。加えて、沖縄では先島地域への戦闘部隊配備をはじめ、自衛隊の大幅な強化が打ち出され、中国との対決姿勢を鮮明にした日米の最前線基地化が進められようとしている。
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_pol_seisaku-anpoboei20101217j-01-w460
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_pol_seisaku-anpoboei20101217j-02-w500
PAC3が未配備の〈3高射群〉の一つが、沖縄の第5高射群である。三菱重工の航空宇宙事業本部長/常務執行役員・小林孝なる人物は、〈早期に配備されることに大きな期待を寄せております〉と物欲しげに語っているが、一つの高射群にPAC3を配備するには約600億円かかるという。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080115-899562/news/20090822-OYT1T00024.htm
財政危機を声高に叫んで消費税率を上げようとする一方で、実際に撃ち落とせるかも分からないPAC3に約600億円もかけて、野田政権は沖縄配備を進めようとしているのである。今回の北朝鮮の人工衛星打ち上げを利用したバカ騒ぎは、ありもしない脅威を強調して市民の不安を煽り、PAC3の第5高射群配備に巨額の予算が浪費されることへの批判・反発を封じ込めようとするものだ。
「週刊金曜日」編『国策防衛企業 三菱重工の正体』に次の一節がある。
〈三菱重工の戦争で儲ける企業体質を現在、最もよく表しているのが弾道防衛ミサイルシステム(BMD)だ。
天文学的な国家予算を必要とするこのシステムに対しては、つぎ込む税金に見合う効果はないとの声が専門家からは早くも出ているが、三菱重工には莫大な収益をもたらすことは間違いない。
「びー・えむ・でぃー?役に立たないよ。マッハ九(音速の九倍)以上の高速で飛んで来るミサイルをミサイルで撃ち落とそうとしたって、アニメじゃあるまいし、当たるのはせいぜい数パーセントだね。そんなもので得をするのは、三菱重工のような軍需企業と献金を受ける政治家ばかりだよ。
米国の下請けに成り下がった資本家と、国士ヅラして私腹を肥やす政治家ばかりはびこって、日本は本当にろくでもない国になってしまった」
ある若手軍事評論家はこう憤る。彼は、日本の核武装を主張する“タカ派”だが、BMDは絵に描いた餅に過ぎないという〉(P60〜61)
沖縄島・宮古島・石垣島に配備されるPAC3の映像をテレビで見て、これで安心だから観光に行こう、と考える人がいるだろうか。PAC3が配備されるくらいだから、やっぱり危険なんだ、と不安を覚える人の方がずっと多いだろう。
政府・防衛省・軍需産業に踊らされて、危機管理対策本部会議を立ち上げ、役にも立たないPAC3配備を進めるのは、まさに愚の骨頂である。それは自ら「風評被害」を起こして観光業者を苦しませるものでしかない。
北朝鮮の人工衛星打ち上げを止めるのは外交の力であり、北朝鮮の軍部は日本の過剰反応をむしろ喜んでいるだろう。