30日は午後3時から那覇地方裁判所で、4月に米軍基地内に長時間拘束されて件に関し、国を訴えた裁判の第1回公判があった。2時の事前集会から多くの人が応援に集まってくれ、傍聴してくれた。深く感謝したい。
原告として意見陳述した内容を以下に引用して紹介したい。
最初に、去る4月に元海兵隊の米軍属に殺害された女性に対し、哀悼の意を表したいと思います。沖縄に米軍基地が集中し、県民が過重な負担と差別的状況を強いられているが故に起こったこの事件に、強い怒りと悲しみを覚えます。
この事件を契機に、改めて日米地位協定の問題が提起されています。米兵及び米軍属に有利な特権を与える同協定は、一方でまた、私たち県民に不利益をもたらし、憲法で保障された基本的人権を侵害するものです。同協定にはらまれた問題を解決しない限り、私たち県民は何度も犠牲を強いられる。そのような思いを抱き、本裁判を起こしました。
私は沖縄島北部の今帰仁村に生まれ育ちました。現在は名護市で生活しています。辺野古新基地建設問題が起こってからこれまで、一人の名護市民、沖縄人として、反対運動に参加してきました。
この問題の発端は1995年9月4日に発生した、3人の米兵による小学生に対するレイプ事件です。私は当時、中部にある高校で教員をしていましたが、事件に大きな衝撃を受けました。多くの県民が、このような凶悪な米軍犯罪が二度とおこらないことを願い、米軍基地の撤去を求めました。
しかし、日米両政府は同事件を利用し、よりによって事件が発生した地域に近い、名護市辺野古に新基地を造るという暴挙に出ました。沖縄島中南部の米軍基地を削減し、北部に集中させる。そのようなことが行われれば、北部地域は米軍による事件・事故が多発し、住民生活が破壊されるのは目に見えています。4月に名護市出身の女性が元海兵隊の米軍属に殺害された事件は、そのことを示すかのようです。
名護市民はそのことに反対し、1997年の名護市民投票を皮切りに、名護市長選挙、名護市議会選挙などで何度も反対の意思を示しました。しかし、名護市民が民主的な形で示した民意を、日本政府は踏みにじり、辺野古新基地建設を強行しています。
事ここに至って、自ら行動に立ち上がらない限り、新基地が造られてしまう。名護市民及び北部の住民はこれから先、米軍の事件・事故に苦しめられ続ける。そのように考え、私は辺野古の海、大浦湾でカヌーを漕いで抗議行動に参加してきました。また、キャンプ・シュワーブのゲート前でも座り込みの抗議行動に参加してきました。
それに対し去る4月1日、米軍当局は軍警備員を使って、私に弾圧を加えました。辺野古岬付近の海から暴力的に引きずり上げられ、拘束された後、米軍憲兵隊のパトカーに乗せられ、事務所に連れていかれました。通訳の女性に、弁護士に連絡するよう求めましたが、接見は名護署に行ってからになる、と拒否されました。
それから8時間近くも、外部との連絡がまったく取れないまま、米軍基地内に監禁状態に置かれました。弁護士との接見ができないので、濡れたウェットスーツを着替えることもできません。8時間の間、与えられたのはハンバーガー1個とペットボトルの水1本だけでした。4月に入っても室内は寒く、大半の時間は立って体を動かしていました。もし体調不良を起こしたり、持病のある人だったらどうなっていたか。
拘束されている間、腰のホルスターに拳銃をさした3人の米兵が、交代で私を監視していました。廊下の隅で、迷彩服の戦闘服を着た米兵と二人だけで、向かい合っていたのです。弁護士や県選出の国会議員が私のことを探し、状況確認しようとしても、まったくできませんでした。こういうことが日本国内で起こっていること自体、異常です。
憲法では警察に逮捕され、身柄を拘束されたとき、私たち市民は弁護人を依頼する権利が保障されています。法的知識のとぼしい市民にとって、弁護士と相談しなければ的確な対応ができません。また、弁護士を通して外部との連絡が取れないと、不安と動揺に襲われ、心身ともに追い詰められます。
今回、米軍から中城海上保安本部への引き渡しが大幅に遅れたため、私は憲法で保障された権利を奪われ、長時間の苦痛を強いられました。米軍基地の中はまさに治外法権の場であり、日米地位協定が日本国憲法より上にあるような異常な状況を、身を持って体験しました。このような状況を放置してはなりません。
現在、沖縄では日米地位協定の抜本的改定を求める声が大きく上がっています。米軍の特権を認める一方で、沖縄県民に犠牲を強いる構造的差別に真摯に目を向けるべきです。米軍基地内であっても、憲兵隊に拘束された段階で、弁護士との接見ができるようにすべきです。
最後に、沖縄で米軍による事件・事故がくり返されないように願い、辺野古新基地建設阻止、沖縄のすべての軍事基地が撤去されるように、私自身できる限りの努力をしたいと思います。それが沖縄に生まれる将来の世代への、私たちの責任だと思います。
以上、引用終わり。裁判では原告席に座っている国側の面々に対し、以下の要旨の内容を付け加えた。
国の皆さん。日本が主権国家、法治国家であるというなら、米軍の前に日本に住む市民、沖縄県民の生命と財産、人権を最優先して守ってください。4月の女性の殺害事件は、皆さんにも責任があります。米軍基地に連れ込まれたらどうなったか分からない。そういう地位協定の問題を解決してください。
若干、言葉は違うかもしれないが、言いたかったのはそういうことである。