ＭＶ２２オスプレイを沖縄に配備する前に、一時的にヤマトゥの基地に駐機して安全性をアピールするという話があったのだが、米軍の運用上の調整がつかなかったとかで断念したという。
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20120323-00000018-jnn-pol
そうなるんじゃないかと思ってはいたが、どこからか米軍のホンネなるものが……。
「日本政府が沖縄県民を安心させるために、オスプレイを本州の基地に一時駐機しろ、と言ってるだと？おいおい正気かよ。そんなことしたらオスプレイの騒音がばれるだろうが。だいたい本州の基地で事故ったらどうすんだ。ただでさえうるさい沖縄の連中が余計に騒いで、普天間基地への配備がアウトになっちまうだろうが。安全性を証明するだ？ボケが、危険性が証明されないうちにさっさと沖縄に配備すればいいんだよ。辺野古は進まないし、野田だの田中だの玄葉だの、使えねー奴らだな、まったく……」
普天間基地に配備する前に「本州の基地」に一時駐機して安全性をピーアールするなど、最初から欺瞞にすぎない。岩国に一時駐機すれば地元から反発が出て、騒音を訴える声が報道されてマイナス効果であり、仮に事故でも起これば沖縄の反対運動が拡大する。下手な小細工を弄するより、沖縄の反対の声を無視して強引に押し切ったほうがいい、という政治判断が見え見えである。
しかし、ヤマトゥでは一時駐機すらできないということは、それだけオスプレイが危険であり、住民の反発が強いことを示している。にもかかわらず、沖縄では市街地のど真ん中にある普天間基地に、オスプレイを恒常的に配備し、県民の頭上を飛び回らせるという。岩国基地に在沖海兵隊１５００人を移駐するという話がつぶれたのも記憶に新しいが、再び露骨なダブルスタンダード、沖縄差別が行われている。
最近出たカレル・ヴァン・ウォルフレン著『日本を追い込む５つの罠』（角川ＯＮＥテーマ21新書）に次のような一節がある。
〈まず沖縄は日本に属するのか、と問いかけてみたい。あなたはもちろんそうだ、と答えるだろう。一九七二年以前、日本政府は沖縄をアメリカから取り戻そうと大変な努力をした。沖縄返還前、この問題について日本にきわめて強いナショナリズム的な感情があったことを私も記憶している。
しかし単に建前にとどまらない実質的な意味で、沖縄は本当に日本の一部だろうか？
沖縄を訪れる多くの外国人はそうではない、と感じている。そして大勢の日本人も、観光客としてやってきてみて沖縄は日本だと実感するかといえば、そうではない。ヤシなどの熱帯樹林や灌木が生い茂るこの地は、どこかハワイに似ている。
しかし沖縄が真に日本の一部だと感じられない理由は他にもある。
この地で起きる出来事に対し、本土に暮らす一般の日本人が感じ、それが国民に与える影響は、東北や九州などの地域が何らかの悲劇に見舞われた場合と比較して、違うのではないだろうか。
沖縄の人々自身が、自分たちが日本の他の人々と同等にあつかわれていないと感じていることは、よく知られた事実である。日本市民である沖縄の人々が差別されていることは間違いない〉（154〜155ページ）。
１９７２年以前にウォルフレン氏が目にした日本のナショナリズムとは、しょせん、近代に入って初めて手に入れたが戦争で失った領土を取り戻す、という欲望の噴出でしかなかった。
３・１１地震・津波・原発事故以後、福島と沖縄の共通点を指摘する声が多く出た。しかし、私がこの１年、感じ続け、考え続けたのは、福島と沖縄の違いだった。中央対地方という枠組みに収まらないヤマトゥとウチナーの違いにこそ目を向けなければならない。それは今回のオスプレイに対する政府の対応にも露骨に現れている。
仮にオスプレイが沖縄で事故を起こしても〈本土に暮らす一般の日本人が感じ、それが国民に与える影響は、東北や九州などの地域が何らかの悲劇に見舞われた場合と比較して、違う〉だろう。日本政府・防衛省の対応の底には、そういう認識が見え隠れする。
北朝鮮の人工衛星打ち上げを利用した沖縄島や石垣島へのＰＡＣ３配備も、住民を守るためではなく、４０年前に取り戻した領土を守る訓練でしかない。軍隊は住民を守らないし、国は沖縄県民を守らない。犠牲になるのが嫌なら、立ち上がって国の政策に抵抗するしかない。