「慰安婦」「住民虐殺」削除が問題になっていた第32軍司令部壕の説明板が、検討委員や市民団体の要請を無視し、出し抜くようにして23日に設置された。
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2012-03-24_31457/
年度内の作業完了を理由にしているが、作業が遅れた原因は、検討委員に相談もなく文言を削除し、問題を起こした県当局にある。歴史遺跡の説明文案に疑問があるなら、検討委員会を再度開いて議論し、資料を再検証して正確を期するのが当たり前だ。一方的に削除してすまされることではない。専門家をまじえて「確信が持て」るまで議論し、検討すべきであり、「お役所仕事」で設置してあとは知らない、ではすまされない。
この問題は、仲井真知事をはじめとした県当局の沖縄戦に対する認識、向かい合う姿勢、継承する方法に加え、、県の文化行政や検討委員会のあり方も問われている。さらに、県庁役人の事なかれ主義、責任逃れの問題は言うまでもなく、「慰安婦」「住民虐殺」という日本軍の否定面を消し去り、日本軍の「名誉回復」を図ろうとする右翼勢力の動きに、仲井真知事をはじめ県当局が積極的に同調していることが、より大きな問題としてある。
それは同時進行形で起こっている沖縄島、宮古島、石垣島へのPAC3配備に賛成している知事の姿勢にも通じるし、普天間基地の「県外移設」を唱える一方で高江のヘリバッド建設を進め、与那国島への自衛隊配備を容認してきた姿勢にも通じている。
沖縄戦の歴史認識の問題は、米軍・自衛隊の強化と連動して起こるのが常だ。沖縄県民に国防をになわせるためには、「軍隊は住民を守らない」という沖縄戦の教訓を県民の意識から消し去る必要があるからだ。「慰安婦」と一緒に「住民虐殺」「捨て石」という表現が削除されたのは、沖縄における自衛隊強化と密接に結びついている。
戦争中毒国家アメリカは中国を次の軍事的脅威とすることで、それに対抗する形で軍産複合体の利益を追求しようとしている。米軍と一体化して日本も対中国の軍事強化を進めており、琉球列島全体が中国に対抗する前線基地として利用されようとしている。このような大きな動きをみる時、第32軍司令部壕の説明板問題は、けっして小さな問題ではない。
昨年来続いている八重山教科書問題も含めて、同時並行的に進められている沖縄戦の歴史歪曲と沖縄における自衛隊の強化、辺野古・高江の米軍基地建設に反対しましょう。