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Channel: 海鳴りの島から
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普天間基地の「県内移設」と固定化を許してはならない。

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 12日に行われた宜野湾市長選挙は、新人の佐喜真淳氏が元職の伊波洋一氏を破って当選した。県内紙には勝因、敗因をはじめ選挙の分析・解説が載っているが、今回の選挙の特徴の一つは、告示直前になって「普天間基地の固定化」がクローズアップされたことだった。2月3日に「グアム移転協議見直し」が「日米関係筋」から明らかにされ、以来、マスコミはその報道一色となり、それまで大きく報じられていた真部沖縄防衛局長の選挙介入問題は、テレビや新聞から消えた。
 そして、普天間基地の固定化が煽られる一方で、嘉手納より南の基地の先行返還が打ち出された。実際には何一つ具体的に決まっていないのに、牧港補給地区やキャンプ瑞慶覧の返還がマスコミで取り上げられ、さらに10日には改正沖縄特別振興措置法と改正駐留軍用地返還特別措置法が閣議決定され、国会に提出された。佐喜真氏の当選に政府が期待をかけ、側面支援をしていたのは明かであった。

 言うまでもなく、政府の佐喜真氏に対する期待は、佐喜真氏がかつて辺野古「移設」推進を唱えていたことにある。しかし、今の沖縄では辺野古「移設」を掲げては、選挙で当選することは難しい。2010年の県知事選挙における仲井真知事にしても、今回の佐喜真氏にしても、「県外移設」に転じることで普天間基地問題を争点からはずし、経済振興を焦点化して勝利を導いた。もし、政府が期待するとおりに仲井真知事や佐喜真新市長が選挙公約をくつがえし、辺野古「移設」容認に転じれば、有権者の支持を一気に失うのは間違いない。
 一方で、仲井真知事にしても佐喜真新市長にしても、「県外移設」を唱えてはいるが、その中味に具体性はない。どの県のどの基地にどのようにして普天間基地を「移設」するのか。それは示されていない。ただ政府に「県外移設」を要求するだけなら、政府が方針転換しない限り、実際には何も動かないことになる。
 13日夕方のテレビニュースで、玄葉光一郎外務大臣が二井関成山口県知事と対談し、米国が求める在沖海兵隊の一部の岩国基地移転に反対し、応じない方針を示したことが報じられていた。

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4951727.html

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2012021300725

 宜野湾市長選挙が終わると同時にこの動きである。玄葉外務大臣の発言は、普天間基地の「県外移設」どころか、在沖海兵隊兵力の「県外分散」すら否定するものだ。野田政権は仲井真知事や佐喜真新市長に対し、普天間基地の固定化を圧力手段として使いながら、辺野古「移設」を迫っていこうとしている。
 はたして佐喜真新市長はそれをはね返して、自らが選挙で声高く主張していた普天間基地の固定化を阻止することができるのか。ここで問題となるのが、基地交付金など防衛予算の増額を政府に求めて市民に還元する、という佐喜真新市長の主張だ。

〈「基地交付金」とは、市町村が米軍及び自衛隊使用の固定資産に対して課税することができないため、固定資産税の財源補てんの性格をもつ。「調整交付金」は米軍の使用する固定資産税には都市計画税、住民税、電気、ガスなどの市町村税も課すことができないので、それを補てんするために交付されるものである〉(宮里政玄『学問の現実と津梁』158ページ)。

 基地関連の交付金にはこのような性格があり、基準以上の増額やあるいは「格段の配慮」で基地関連予算を政府から引き出そうとすれば、当然、政府は相応の協力を宜野湾市に求めてくる。
 佐喜真新市長の主張は、政府がこれまで進めてきたアメとムチの手法に乗っかるものだ。それは普天間基地の存在を前提とするものであり、「県外移設」や「固定化阻止」という主張とは矛盾するものである。それどころか、基地関連予算が市の財政に占める比重が大きくなれば、基地への依存度が深まって普天間基地の固定化がさらに進むことになる。
 政府が求める協力は辺野古「移設」だけではない。騒音問題やクリアゾーンの問題、米軍との日常的な協力体制など、伊波・安里市政で進められてきた基地対策が後退し、防衛省予算獲得のために政府との協力が進められていくなら、米軍にとって普天間基地は、より居心地の良いものになっていく。うるさい市長がいなくなり、地元がより協力的になるなら、米軍が普天間基地を手放す動機は減少する。

 佐喜真新市長が選挙で強調した普天間基地の「固定化阻止」は、基地への依存度を高める経済振興の手法との間に矛盾を抱え込んでいる。市政を運営するなかでその矛盾を解決できなければ、結果として普天間基地の固定化が進んでしまう危険性が大きい。
 普天間基地「移設」問題が起きてから、初めて宜野湾市で保守系首長が生まれたことは、佐喜真新市長を推した自民党や公明党、経済界がいう普天間基地の「危険性の除去」、「県外移設」、「固定化阻止」の内実と実行力が、これから厳しく問われることでもある。
 年内にもMV−22オスプレイの普天間基地配備が行われる予定だ。「危険性の除去」を口にするなら、佐喜真新市長は市民の先頭に立って、早急にオスプレイ配備反対の取り組みを進めなければならない。そして、普天間基地の「県外移設」と「固定化阻止」という選挙公約を、一日も早く具体的な形として実現しなければならない。ことは市民の生活の安全に直結する問題であり、普天間基地問題をめぐって政府との間に妥協は許されない。

 

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 【講演会案内】

演題:「沖縄における枯れ葉剤汚染について〜化学兵器・枯れ葉剤と猛毒ダイオキシン」

講師:伊波義安さん

日時:2月19日(日)午後2時より

場所:辺野古交流プラザ(辺野古公民館)

主催:ティダの会/新基地建設問題を考える辺野古有志の会

☆多くの皆さんのご参加を呼びかけます。


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