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『週刊新潮』の呆れた記事

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 『週刊新潮』6月12日号に〈特集 沖縄県に自然発生した 〃親〃「米軍基地運動」〉という記事が載っている。普天間基地大山ゲート前で月〜金曜日の早朝に取り組まれている米軍への抗議行動を揶揄し、「ハート・クリーン・プジェクト(HCP)」という親米団体を持ち上げて宣伝する内容で、いかにも『週刊新潮』らしく「親米軍基地」ぶり全開の記事である。

 同記事の中にHCPのメンバーという男性理容師の発言が載っている。米軍に抗議行動をしている人たちの声に対してのものだ。

〈「騒音測定器で調べたことがあるのですが、オスプレイの離着陸時は110デシベルで、彼らの叫び声は130デシベルでした。しかも、オスプレイは一瞬ですが、彼らの騒音は毎朝2時間以上続く」〉(45ページ)。

 一読して呆れてしまった。130デシベルといえば以下のような音量だ。

http://www.toho-seiki.com/info04_e.htm 

 そんな声を2時間も出せる人間がいるのか。この理容師の発言どおりなら、週に1回来ているというHCPのメンバーはもとより、抗議行動の参加者も聴覚障害者が続出しているはずだが、そういう事実はあるのか。そもそも、この発言をもっともらしく記事にしている執筆者は、取材後に耳に異常をきたさなかったのだろうか。

 同記事には執筆者名が記されていないが、『週刊新潮』の編集部員であれ、雇われたライターであれ、〈騒音測定器で調べた〉という男性理容師の発言を、真に受けたというのであろうか。そうではあるまい。誇張と知っていて、あえて利用しているのが見え見えである。

 同記事にはほかにも、沖縄の〈反基地活動家〉をおとしめるための嘘が続出する。抗議行動を行っているのは〈内地から来たプロ活動家たちの〃お仕事〃〉(44ページ)で、〈そのほとんどがマスクで顔を隠している〉(同)と嘘を書きつらねている。私も大山ゲートでの早朝抗議行動に何度か参加しているが、ヤマトゥから来た移住者もいればウチナンチューもいる。行動は自主的なもので、〈そのほとんど〉は素顔を出して抗議している。

 この記事の執筆者もその様子を見ているだろうに、よくもまあ平然と嘘が書けるものだ。どうせ読者は確かめに行かない、と高をくくっているのだろう。ほかにも、あたかも金をもらって抗議行動に参加しているかのように描いたり、基地の金網に巻いたテープに割れたガラスや針金が仕込んであったなどと、ネット右翼がばらまいている嘘を、何の検証もしないで書いている。もとより、沖縄の〈反基地活動家〉をおとしめ、印象を悪くするための嘘を拡散するのが目的なのだろう。

 目的が一緒だけに『週刊新潮』の記事では、HCPの〈親「米軍基地」運動〉が大きく持ち上げられているが、HCPについて次のような記述がある。

〈HCPのメンバーの一人は、「幸福実現党から選挙に出たメンバーがいますが、この活動にはどの政党も宗教も関与していません。我々は右翼でも左翼でもない。〃仲翼〃です」と笑う〉(47ページ)。

 語るに落ちるとはこのことで、思わず笑ってしまった。幸福実現党沖縄県本部の幹部である金城竜郎氏もHCPのメンバーだという。米軍との関わりもかなり深いようだ。ロバート・エルドリッジ・在沖縄海兵隊政務外交部次長は、HCPの〈活動メンバーとは、食事会を開いたり、一緒にスポーツを楽しんだり、交流も頻繁に行われています〉(47ページ)と同記事で語っている。

 米軍とHCPの親密な関係が伝わってくる。それにしても、いくら親米活動をやっているとはいえ、普通の市民グループが米軍と食事会やスポーツなどの交流を〈頻繁に〉行えるものなのか。HCP代表の手登根安則氏は、チャンネル桜沖縄支局の番組によく出ているが、同氏が関わっている沖縄オスプレイフアンクラブのフェイスブックを見ると、米海兵隊の広報機関がやっているのか、と間違えそうになる。

 HCPのような団体を沖縄の新しい動きとヤマトゥのメディアはとらえているようだ。しかし、沖縄では米軍の占領直後から心理・情報戦の一環として、米軍への協力者づくりが行われてきた。親米の地元組織や個人を育成することは、占領統治に欠かせないものだ。同時に、地域住民に受け入れられるように宣撫工作も常に行われてきた。米軍基地のフェスティバルや広報誌の発行、地域の図書館への図書寄贈、米兵による清掃ボランティア、ブラスバンドの演奏など、それは現在も続けられている。

 HCPや沖縄オスプレイフアンクラブは米軍からすれば、沖縄の反基地運動を沈静化させ、民間の協力体制を作っていく上でかっこうの団体なわけだ。それだけ利用価値が大きいから、米軍は頻繁に交流を行っているのであり、基地内の写真や活動などの情報提供も行っている。こういう親米グループを『週刊新潮』が評価するのは、沖縄に米軍基地を固定化しておきたいからだろうが、編集部もライターも、国防強化を口にしながら自分たちは基地負担を担いたくないという虫のよさを自覚し、恥じることはないのだろうか。

 


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