12月20日付沖縄タイムス朝刊の1面トップに〈米軍機騒音「気になる」61%/名護の小中生 14年調査より増〉という見出しの記事が載っている。以下に引用して紹介したい。
【名護】米軍機やオスプレイの騒音問題について、名護市教育委員会は市内の小学5、6年生と中学生にアンケートを実施し、「学校で飛行機やヘリの音が気になったことがよくある」あるいは「ある」と回答した人が61.2%に上がったことが分かった。初めて調査した2014年は58%で、3.2ポイント増加。自由記述では「うるさくて勉強に集中できない」などの声が相次いだ。識者は基地被害を訴える重要なデータになると指摘する。(北部報道部・玉城日向子)
「勉強集中できず」
市は10月17日~11月30日、市内の13小学校と8中学校にアンケートを実施。対象者3610人のうち、64.8%に当たる2338人が回答した。
質問は全9項目。オスプレイと他の飛行機のどちらがうるさいかの設問では、オスプレイが81.5%、他機が18.5%だった。オスプレイの音に恐怖や不快感があるかの問いには「よくある」「ある」が32.6%、「あまりない」「ない」が64.7%となった。
今回は低周波音の質問も追加。「気分がいらいらする」「胸や腹が圧迫されるような感じがする」などの心理的影響の有無について「よくある」「ある」21.6%、「あまりない」「ない」が78.4%で、数値は低いが一定の影響が見られた。頭痛や耳鳴りの他、眠れないと答えた人も13%程度いた。
自由記述では「戦争が始まるのかと思う」「とても迷惑です。今すぐに止めてほしい」「ヘリコプターが真上を通過するとき、ミサイルのような音がして怖くなって避難した」(原文ママ)などの声があった。
琉球大学の渡嘉敷健准教授(環境・騒音)は「約10年前の調査と比べても音が気になると答えた人の割合が高く、騒音が日常的になっている」と指摘。「新基地建設が進み名護の当事者性が増す中で、基地被害を訴える重要なデータになる」と語った。
調査は、大城敬人名護市議ら市民団体が市に要請して実現した〉
以上、引用終わり。
記事の最後に出てくる〈市民団体〉とは、「新基地問題を考える辺野古有志の会」と「ティダの会」で、今年の5月24日に名護市教育委員会に「名護市小中学校による米軍基地の航空機などの音に関するアンケート調査申し入れ」を行った。
久辺三区(久志区、辺野古区、豊原区)は、キャンプ・シュワブで訓練する航空機の騒音や小銃、機関銃の射撃音、廃弾処理の爆発音などによって、日常的な騒音被害に悩まされている。
辺野古新基地建設に反対すると同時に、現在起こっている基地被害に対する取り組みも必要だ。そのような問題意識のもと、「新基地問題を考える辺野古有志の会」と「ティダの会」では、この間、住宅地域に最も近い着陸帯フェニックスの撤去や廃弾処理場の撤去を沖縄防衛局に求め、沖縄県の基地対策課や名護市に要請活動を行ってきた。
航空機の騒音に関しても、琉球大学の渡嘉敷健准教授に協力をお願いし、久辺三区内で写真展や学習会を開いている。名護市教育委員会による今回のアンケート調査は、このような取り組みの一環として実現したものだ。
今年は4月に宮古島沖で自衛隊ヘリが墜落し、11月には屋久島沖で米軍のオスプレイが墜落した。いずれも乗員全員が死亡する大事故であり、1年にこのような事故が2件も起こったのは異常である。
その背景にあるのは、日米両政府が中国と軍事的に対抗するため「南西シフト」の強化を打ち出し、米軍と自衛隊の増強と訓練激化を進めていることだ。この状況は来年以降も続き、住宅地に自衛隊機や米軍機が墜落する大惨事が、いつ、どこで起こってもおかしくない危険に琉球弧の住民はさらされている。
「新基地問題を考える辺野古有志の会」と「ティダの会」では、騒音対策だけでなく、久辺三区上空での米軍機の飛行禁止と着陸帯・フェニックスの撤去を求める運動も取り組んでいる。
名護市民は27年も辺野古新基地問題に振り回され、対立や分断に苦しめられてきた。市民の中にはあきらめや疲れもあり、地域から運動を作るのは簡単ではない。しかし、その困難を避けていては、地域社会は基地問題について物も言えなくなってしまう。
辺野古新基地建設反対の運動も、地域に根差した住民運動としての取り組みをもっと強化する必要がある。名護市長選挙に敗北したことが、美謝川切り替え工事を許す結果となった。再編交付金で国が市民を絡めとろうとする中、米海兵隊基地の北部地域集中が市民生活に与える被害を、もっと工夫して訴える必要がある。
今回の名護市教育委員会によるアンケート調査を、名護市民が子どもたちの教育環境を改善し、基地問題について考えていくために生かしたい。