6月26日付琉球新報24面に、名桜大学の「健康情報学科」開設記念シンポジウムの報告が載っている。
沖縄県の新型コロナウイルス感染対策を中心に行ってきた高山義浩氏が基調講演を行っていて、発言の要旨が載っている。その中に次の一説がある。
〈パンデミックを思い出にせず、いかに地域医療につなげていくか、データをいかに次の時代につなげていくか、考えてみたい。/新型コロナウイルスの都道府県別の新規陽性者の推移をみると、沖縄は例外的に大きな第6波を経験し、いまだ高いレベルで続いている。一方、コロナのインパクトを冷静に、人口10万人あたりの死亡率で見ると、1月から5月末まで全国は10・8、沖縄は半分以下の4・3だ〉。
引用した高山氏の発言を見ると、あたかも沖縄県の新型コロナウイルス対策が奏功し、全国的に見ても死亡率を低い水準で押さえているように見える。しかし、その数字は今年の〈1月から5月末〉に期間を限定したものだ。実際には、沖縄の感染状況は死亡率を含めて全国でも最悪レベルだ。
インターネットで検索すれば、都道府県別の新型コロナウイルスの感染者数や死者数を確認できる。今年6月24日時点の人口100万人あたりの死者数は、大阪府が最悪の578・1、次いで兵庫県の411・5、北海道の400・8と続き、4番目に沖縄県の329・8が来る。全国平均は246・5である。
この数字を見れば、沖縄県の死亡率は高くなるはずで、高山氏は自らに都合のいい数字を意図的に切り取っているだけだ。高山氏が中心となって進めてきた沖縄県の新型コロナウイルス対策が、うまくいっていると実感している県民がどれだけいるか。むしろ、失敗の連続、と感じている県民の方が多数だろう。
医療関係者が大変な努力と苦労を重ねているのは分かる。私も感謝と敬意の念を持っている。しかし、いま大事なのは沖縄のこれまでの感染症対策の失敗を直視し、問題点を洗い出して反省、改善することだ。個人情報を保護しつつ、国や県にとって都合の悪い情報も県民に公開し、広く意見を取り入れて検証すべきだ。
沖縄の新規感染者数は全国最悪が続いており、県民にとって〈パンデミックを思い出〉にすることなどできはしない。私にも高齢の親や親戚がいる。3回のワクチン接種をしていても、感染対策は変わりなく行っているし、近所のスーパーに買い物に行くのも観光客が少ない時間帯を選んでいる。高齢者施設に入っている伯母は、家族と面会ができない状態が続いている。
高齢者だけではない。出産においても家族は面会や立ち合いができず、父親が新生児を抱けるのは退院後だ。子ども達の感染が増え、家族は家庭内感染をこれまで以上に気を付けないといけない。
ワクチン接種が進み死者数や重症者数が減ってことをもって、新型コロナウイルスの感染を過去の〈思い出〉にすることはできないし、7月に入って米軍が独立記念日でバカ騒ぎし、再び県民に感染を広げる危険もある。
沖縄の新規感染者がなぜ高止まりしているのか。社会的要因だけでなく、国と県の感染症対策の問題点を明らかにし、反省すべきだ。