ドローンの空撮写真で辺野古側の埋め立て状況を示し、工事が進んでいないかのような論調がある。何を馬鹿なことを言って(書いて)いるのだろうか。埋め立て面積が広大だから、土砂投入箇所の広がりが遅いように見えるかもしれない。しかし、埋め立てられた場所の厚みは増している。移動する工事車両がK4護岸の上にどれくらい見えるかを基準にすれば、もうこんなに進んだのか、と思う。
護岸建設の時もそうだったが、自分に都合のいい情報を見たがり、楽観的な解釈にすがりつく人は多い。まだ護岸建設は何パーセントしか進んでいない、焦る必要はない、と現場の状況を知らない者ほどそう口にしていた。しかし、日々伸びていった護岸がつながり、海が閉ざされて土砂が投入され、いまその内部は死の海と化した。
5月に入ってウミガメの産卵期を迎えたが、キャンプ・シュワブの辺野古側の砂浜にウミガメが近づくことはできない。護岸の外側でウミガメを頻繁に見かけるようになったのは、ウミガメが増えたのではなく、広大な餌場(海草・藻場)が護岸で囲われ、砂浜に近づくことができなくなったからだ。それだけ工事が進んだのだ。
基地引き取り運動をしている人たちは、何年以内に基地を引き取るつもりだろうか。焦点となっている普天間基地に関していえば、辺野古新基地建設が進んでいる。辺野古側の埋め立てが完了したとき、状況はどう変化しているだろうか。大浦湾側に軟弱地盤や活断層の問題があるにしても、もうここまで工事が進んだから後戻りはできないと、日本政府は沖縄県知事の権限をつぶして強引に工事を進めるだろう。
反対しても新基地建設は止まらない、とうそぶく基地引き取り論者たちは、その時を待っているのだろうか。沖縄人は好きで反対しているのではない。厳しい現実を知ったうえで、反対しなければ状況はさらに悪くなるから、いろいろなことを犠牲にして反対しているのだが、いつ大阪や福岡、東京に引き取ってくれるのだろうか。
軟弱地盤や活断層の問題があるから、いずれ工事が頓挫するなら、難儀をして辺野古まで行く必要はない。頓挫する時が来るまで座して待ってればいい。だが、そんなことはあり得ない。高江の例を見ればいい。難工事だから進まない、という人もいたが、期限内に工事は終わり、今ではオスプレイが飛び交っている。
金と時間を費やし、いくつものことを犠牲にし、難儀をして現場で抗議する人が増えない限り、辺野古の工事が止まることはない。これは単純な事実だ。自分に都合のいい情報に飛びつくのは、厳しい現実から目をそらし、逃げたいからなのだ。私自身も逃げたい気持ちとたたかって現場に行っている。
ああほんとにな、大阪や福岡や東京に生まれて、そこに住んでいれば、地元で引き取り論をやって沖縄の現場には行かず、好きなだけ本を読んで小説を書けたのに。沖縄のやんばるに生まれて名護に住んでいると、そういうわけにはいかない。
1979年の4月28日、大学に入って2週間ほどして初めて反戦・反基地の集会とデモに参加した。今年の4・28は、あれから40年が経ったのか…、と一人でしみじみ思ったのだが、沖縄の基地の現状はよくなるどころか、さらに悪くなっている。それは沖縄人の努力が足りなかったからだろうか。
あちこち体にガタがきて海の行動は休んだが、できることはやらなければならない。沖縄が米軍にとって都合の悪い場所にならない限り、米軍はいつまでもいる。中国に対抗する最前線の拠点として、自衛隊と米軍が強化されている沖縄の現実であり、逃げる場所はないのだ。