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Channel: 海鳴りの島から
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自衛隊が東北で見せた顔と沖縄で見せる顔は違う

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 5日午前に自衛隊のPAC3部隊が石垣島に到着した。

http://www.okinawatimes.co.jp/article/2012-04-05_32084/

 沖縄島、宮古島、石垣島、与那国島と沖縄全体に自衛隊がこれほど大規模に展開するのは初めてである。恐怖心は人の判断力を鈍らせる。政府・防衛省は、北朝鮮の人工衛星打ち上げを政治的に利用し、あたかも沖縄がミサイル実験の脅威にさらされているかのように恐怖や不安を煽って、市民を守ってくれる自衛隊、という幻想を沖縄県民に植え付けようとしている。
 これはたんなるPAC3の広域移動訓練ではない。沖縄の施政権返還40年にあたる5月15日を前に、沖縄に残る反自衛隊感情を完全に払拭し、琉球列島全体を対中国の軍事拠点にしていこうという国家意思の表出でもある。与那国島、石垣島、宮古島に陸上自衛隊の部隊を配備していく地ならしとして、自衛隊車両を連ねて国道・県道を走らせ、港や公園など市民の目につく場所で、意図的に部隊活動を展開しているのである。
 さらに、行政や教育機関、地域を巻き込んで有事=戦争即応訓練を行うことで、市民が積極的に自衛隊に協力する態勢と意識を作り出そうとしている。まるで県民が防空演習に狩り出されていた沖縄戦前夜のようだ。しかし、1944年10月10日の空襲で沖縄県民が知ったのは、防空演習など何の役にも立たないということだった。
 PAC3も同じである。今回の北朝鮮の人工衛星打ち上げは、外国の専門家にも公開され、発射場所や方向、おおよその日時も分かる。ロケットの性能や気象条件なども分析、観察が事前に行われ、発射場の動向も偵察衛星で監視されている。しかし、実戦ではこうはいかない。
 不意打ちを食らい、多数のミサイルを立て続けに発射されれば、わずか数分で飛来するそれをどれだけ防げるというのか。北朝鮮、中国、ロシアと距離のある米国と隣接する日本とでは、地理的条件がまったく違う。アメリカの真似をしてミサイル防衛をやろうとしても、どだい無理な話である。せいぜい、米国にいいように利用されるだけだ。

 ミサイルが撃ち込まれるということは、全面戦争に突入しているということであり、仮にそうなれば、沖縄は再び「本土防衛」の捨て石として利用されるだろう。実際、いま沖縄で進行している事態は、新たな捨て石化である。
 普天間基地の大規模補修工事を米政府が要求している。

http://www.okinawatimes.co.jp/article/2012-04-05_32086/

 2012年から8年間、200億円をかけて〈普天間飛行場のほぼ全てを補修する計画〉という。これは、普天間基地を固定化する、という米政府の意思表示=脅しである。日本政府がこの要求を受け入れれば、辺野古新基地建設を進める一方で、普天間基地の固定化も容認する、という矛盾を露呈することになる。嘉手納より南の基地の返還にしても、県内に代替施設を造ろうとすれば、行き詰まるのは目に見えている。
 結局、米軍基地の返還は進まず、自衛隊の増強だけが進んで、沖縄島から与那国島まで琉球列島全体が、対中国の日米軍事要塞となり、沖縄の新たな捨て石化が進むことになる。今回のPAC3配備はその一環であり、日本政府・防衛省が考えているのは、沖縄県民の安全ではない。近代に入って初めて手に入れ、40年前に取り戻した、沖縄という領土の防衛である。自衛隊が東北で見せた顔と沖縄で見せる顔は違うのだ。

 ところで、沖縄島、宮古島、石垣島のいずれにおいても、PAC3は島の南部に配備され、北向きに発射されるのだが、目標に命中しなかった場合、パトリオットミサイルはどこに落下するのだろうか。射程範囲は20?というのだが、最長飛距離はどれくらいなのか。南北に長い沖縄島の場合、航空自衛隊那覇基地・知念分屯基地、あるいは米軍嘉手納基地から北向きに発射されたPAC3が、中北部地域に落下する可能性はないのか。
 島の中・北部に住む者からすれば、発射する方向、角度によっては、人工衛星の破片どころか、本物のミサイルが飛んで来かねない。誤爆しました、ではすまされない。目標からはずれたPAC3が、陸地・住宅地に落下する可能性はゼロといえるのか。政府・防衛省・自衛隊・沖縄県・マスコミは明らかにすべきだ。

 


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