この週末、神奈川大学の横浜キャンパスとみなとみらいエクステンションセンターで講演を行った。当初は辺野古の海・大浦湾で取り組まれてきた海上行動を中心に話すつもりだったのだが、元海兵隊の米軍属による凶悪犯罪が報じられたので、事件の背後にある沖縄基地の実態についても時間をとって話した。両会場ともに満席で熱心に話を聞いていただいたことに感謝したい。
20日は午前中、講演の前に神奈川大学の皆さんにどぶ板通りや横須賀軍港を案内していただいた。軍港内をまわる観光船があり、米海軍のイージス艦や空母・ロナルドレーガン、海上自衛隊の護衛艦、掃海艦、潜水艦などをまじかに見ることができた。
船上から自衛隊と米軍の艦船を眺め、写真を撮っている人たちが、沖縄で起こった米軍属による犯罪をどれだけ考えていたか。米軍駐留に疑問も抱かず、肯定的にとらえている人が多数だったかもしれない。横須賀でも10年前に米兵による残虐極まりない殺人事件が起こっているのだが、そのことがいまどれだけ記憶されているのだろうか。
米軍基地のゲート前を通って、殺害現場の雑居ビルの入り口まで歩いた。周囲にはビルが建ち、早朝の犯行とはいえ、こんな所で…と思わずにいられない場所だ。被害者の女性は顔が潰れるほど殴られ、骨折と内臓損傷で苦しみぬいて殺されている。人を殺す訓練を重ねている米兵に、普通の市民が抵抗できるはずもない。まさになぶり殺しである。
沖縄だけではない。米兵・米軍属による凶悪犯罪は、米軍基地がある地域で発生する。日本海軍の歴史があり、米海軍が駐留する横須賀と海兵隊が多数を占める沖縄の違いも目についた。ただ、基地から派生する犯罪でまっさきに犠牲になるのが女性であることはどこも同じだ。今回の沖縄の事件も、犯行内容が明らかになるにつれ、その残忍さが横須賀の事件と重なってくる。
オバマ大統領の訪日を前に、日米両政府は事件の反響を押さえようと必死だ。しかし、「綱紀粛正」や「再発防止」という言葉をいくら唱えても、沖縄の状況は何も変わらない。抗議する側も、実際に政府を追い詰めるまでの取り組みをしなければ、時間とともに曖昧にされてしまう。県民集会を開いて終わりではなく、その後に基地、米軍に対してどれだけ行動を起こせるかが問われている。
21日は午後の講演のあと、かながわ平和祈念館と神奈川県戦没者慰霊堂に案内していただいた。できるだけ全国各地の戦跡や軍事基地を見るようにしているのだが、今回は神奈川大学の皆さんに要望したら、とても親切に対応していただいた。深く感謝したい。