1月29日午後1時半から那覇市民会館中ホールにおいて「番号制度シンポジウムin沖縄」が開かれた。主催は番号制度創設推進本部で琉球新報社、沖縄タイムス社が共催。あらかじめ申し込みが必要だったこともあり、関係者以外の参加者は100名ほどだった。しかし、後半に会場からの意見、疑問があいつぎ、当初の終了予定時間を1時間延長して、午後5時に終了した。
同シンポジウムのプログラムは以下の通り。
(1)主催者挨拶 峰崎直樹(番号制度創設推進本部事務局長、内閣官房参与)
(2)政府説明 向井治紀(内閣官房社会保障改革担当室審議官)
(3)特別講演 前川 徹(サイバー大学1T総合学部教授)
(4)パネルディスカッション
パネリスト
外間喜明(沖縄税理士会副会長)
前川 徹(サイバー大学IT総合学部教授)
三宅俊司(弁護士)
峰崎直樹(番号制度創設推進本部事務局長、内閣官房参与)
向井治紀(内閣官房社会保障改革担当室審議官)
コーディネーター
大野圭一郎(共同通信社那覇支局)
(5)参加者との質疑応答・意見交換(「国民対話」)
(6)閉会挨拶 峰崎直樹(番号制度創設推進本部事務局長、内閣官房参与)
開会の前に内閣府制作の共通番号制度推進の宣伝ビデオが7分ほど流された。
登壇した6人のうち反対の立場は三宅俊司氏ひとり。コーディネーターをのぞいた4人は、肩書きを見れば分かるように賛成・推進の立場の人たちである。つまり、このシンポジウムはあくまで政府が「番号制度」を創設・推進するためのものであり、それを琉球新報社、沖縄タイムス社が共催していることの問題は、くり返し指摘しておきたい。
参加者との質疑応答・意見交換は3時12分頃から行われた。当初は4時でシンポジウムは終了する予定だったので、30分程度が充てられていたのではないかと思う。しかし、質問や意見があいついだため5時まで延長され、計12名が会場から発言した。その全員が「番号制度」に反対する立場で、前川、峰崎、向井の3氏に厳しい批判が続いた。新聞社が共催していることも問い質され、パネリストの構成が偏っていることも”やらせ”と批判された。
主催者挨拶のなかで峰崎氏は、政府が共通番号制度の法案を2月14日に国会に提案すると述べた。それに対し、政府が行ったアンケート調査で8割以上の人が同制度について知らず、さらに86%の人が個人情報の漏洩や不正利用、国による監視強化に懸念を抱いているなかで、見切り発車するのか、と質問が出された。峰崎氏は、国会の審議が報道されることで知られるようになる、と居直った。それに対し、提案は拙速であり、番号制度より先に医療、社会福祉の現場を充実させるべき、という批判が続いた。
講演のなかで前川氏は「正直者であれば、反対する理由はなく、むしろ、税負担を軽くすると同時に、公平で公正な社会にするため、積極的に賛成するべき」と述べた。会場からは、独裁政治ではないのだから賛成があれば反対もあるのは当たり前のこと、反対者を高見から見下し、犯罪者予備軍であるかのように言っている、と抗議の声が上がった。他にも、共通番号制度が知られていないのはマスコミのせい、という前川氏の発言に対し、会場から怒りに満ちた批判があった。
また、精神科の医師から、精神病への偏見が残るなか、自分の病気を隠して生きている人も多い、そういう人たちにとって共通番号制度で病歴が把握されることの脅威が指摘された。その他、社会保障が最も必要な社会的弱者ほどパソコンを持たず、使えないという現実に目を向けていない、という批判や、会場内外に配置されているイヤホーンをあてた黒服姿の監視員への批判、クロヨンと言われるが農業従事者の厳しい実態など、数多くの疑問や意見が出された。
住基ネットと同じように、共通番号制度や国民1D制度は、市民の利益を優先して作られるのではない。政府が市民の情報を漏れなく収集し、一元的に管理することによって、政府の思うがままの政策を実現するための制度である。
税務や医療、福祉、介護、労働、年金などの個人情報を政府が一体的に把握しようとする目的は、市民を選別して社会保障の「無駄」を省き、予算を抑制するためである。そのために個人のプライバシーが侵害されることを、政府も推進者たちも厭わない。シンポジウムに参加して、その実感を一段と深めた。
野田政権は、市民の8割がその内容を知らないにもかかわらず、2月14日に「社会保障・税に関わる番号制度」(共通番号制度)の法案提出を見切り発車しようとしている。ぜひ、反対の声を上げましょう。