日本政府が戦争をできる国、海外で戦闘を行う国に変貌していくなかで、米日両軍にとって沖縄の重要性は今まで以上に高まっていく。安倍首相がもっとも脅威を感じているのは、東アジアにおける中国の軍事的台頭であり、海軍力・空軍力の強化による領土・領海拡大の動きである。そのような中国の動きに対抗するため、先島への自衛隊配備や辺野古新基地建設など、沖縄を米日両軍の前線拠点として強化していく策動が進められている。
同時に、沖縄の軍事要塞化を下支えするものとして、沖縄県民の意識改革も策されている。沖縄戦の体験に根ざした、軍隊は住民を守らない、という認識を払拭し、米日両軍に積極的に協力していく民間体制を作り上げていくこと。それが日本政府の至上命題となっている。現代戦は総力戦であり、「南の防人」として南西領土防衛をになうものへと沖縄県民を変えていくために、沖縄戦の歴史認識や米軍・自衛隊への認識をめぐる問題が、さらに前景化していくはずだ。
そういう中で沖縄でも、民間から米軍・自衛隊を支えようと、ネット右翼の動きが活発化している。2013年8月19日にチャンネル桜沖縄支局が開設した。その開局記念の特番に沖縄から、「龍柱問題」で翁長雄志那覇市長を訴えた金城テル氏をはじめ、恵隆之介氏、「狼魔人日記」の江崎孝氏、手登根安則氏、奥茂治氏といった面々が出演している。5分30秒あたりから5人のコメントが聴ける。
https://www.youtube.com/watch?v=CVaMYuYCc4k
この5人に沖縄対策本部代表の仲村覚氏を加えれば、いま沖縄で活動しているネット右翼の主要メンバーがそろう。チャンネル桜の番組で、沖縄から「魑魅魍魎たち」をたたき出すためには情報戦に勝ち抜くしかない、と発言している手登根氏は、本ブログで批判した『週刊新潮』6月12日号の記事にも出ていた人物で、オスプレイファンクラブの中心メンバーとして、親米軍活動を熱心に行っている。その活動の一つを仲村氏がユーチューブに投稿している。
https://www.youtube.com/watch?v=9LDLv6iuQFI
普天間基地の辺野古「移設」を迅速に進めようというデモに出発する前のあいさつだが、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落したあとの集会で、日頃「命どぅ宝」、反戦平和を訴えている人が手登根氏に、1人でも死ねば基地が動いたのに、と言ったのだという。どこの誰が発言したのか、具体的には示さずに平然とデマを飛ばす。いかにもネット右翼らしいやり口をはじめ、辺野古「移設」を迅速に進めよ、と日の丸を掲げてあいさつし行進している姿に、手登根氏の思想と手法がよく現れている。
手登根氏らの行動は、東京で行われた次の動きともつながっている。2013年1月28日、沖縄県全41市町村の首長・代表、議会議長が東京で、MV22オスプレイの沖縄配備を撤回し、普天間基地の閉鎖・撤去と県内移設の断念を求めた建白書を、安倍首相に提出した。
http://kenmintaikai2012.ti-da.net/e4331515.html
その前日の27日には、沖縄からの代表を中心としたデモが銀座で行われたが、それに対し日の丸を掲げたグループがカウンター街宣と称し、「売国奴」「シナの手先」などのヤジを飛ばした。そのグループの一つに「そよ風」というのがあり、27日の行動をユーチューブに投稿している。
https://www.youtube.com/watch?v=8EnOGZux7WI
あまりの下劣さに反吐をもよおすが、仲村覚氏の沖縄対策本部は「そよ風」の中心メンバーを呼んで、「カウンター街宣」の報告会を開いている。その様子もユーチューブに投稿されている。
https://www.youtube.com/watch?v=14dRXU-StpY
仲村氏を介して沖縄とヤマトゥのネット右翼グループが、根っこでつながっていることがよく分かる。ハートクリーンやフェンスクリーンなどと聞こえのいい名称で、あたかもボランティアの清掃活動を行っているかのように見せかけているが、手登根氏がやっていることの実態は、中国への排外的ナショナリズムをむき出しにして、沖縄の米軍基地強化のために市民レベルから運動を作っていこうというものだ。だからこそ『週刊新潮』も注目したのだろう。