25日は午後からティダの会と新基地建設問題を考える辺野古有志の会で、沖縄防衛局名護事務所に対し「辺野古新基地建設断念と評価書の公聴会を求める申し入れ」を行った。以下に申し入れ文を紹介したい。
辺野古新基地建設の断念と評価書の公聴会を求める申し入れ
1月19日に名護市辺野古への米軍普天間代替基地建設に係る環境影響評価(アセスメント)評価書に対する県環境影響審査会が開催されました。冒頭、宮城邦治審査会長は私見として、沖縄防衛局による未明の評価書搬入について強い不快感を表明しました。さらに審査会では、評価書の段階で初めてMV22オスプレイが記載されたこと、飛行経路や滑走路の距離が変更されたことなどへの批判や、オスプレイの騒音、低周波音、風圧、高温の排気ガスなどへの懸念が続出しました。
環境アセスメントは事業者による情報公開と説明、それに対する住民の意見表明を不可欠のものとしています。しかし、事業者である沖縄防衛局は、最終段階の評価書にいたって初めてオスプレイの配備を記載し、そのために名護市民・沖縄県民はオスプレイについて説明を受け、意見を述べる機会をいっさい奪われました。
すでに1996年の段階で政府・防衛省は、オスプレイの沖縄配備を知っていたことが新聞・テレビ報道などで明らかとなっています。沖縄防衛局は意図的にオスプレイの配備を隠し、名護市民・沖縄県民を欺き続けてきたのです。このような沖縄防衛局の姿勢は、環境アセスメントの主旨を根本から否定するものであり、断じて許されるものではありません。
名護市民・沖縄県民が深く関心を持ち、注目してきた機種と飛行経路、騒音や安全性に関する情報を隠蔽し、最終段階で記載および変更するなど、今回の評価書は、嘘と欺瞞で塗り固められたものでしかありません。基地周辺での生活を強いられている住民を愚弄するのも大概にしなさい!このようなデタラメな評価書しか提出できない事業者・沖縄防衛局に工事をやる資格はありません。即刻、辺野古への新基地建設を断念することを求めます。
また、評価書についての公聴会の開催を要求します。オスプレイについて説明責任を果たさず、住民からなんの意見も聴かずに工事を強行することを、私たちは許しません。
以上、申し入れます。
話し合いの冒頭、名護事務所の石倉三良所長は、「沖縄の負担軽減」や「沖縄県民の理解」という決まり文句を使って、新基地建設を進める意思を示した。しかし、名護市、北部地域にとって基地負担は軽減されるのか、県民の理解を求めるというのならアセスの準備書段階でオスプレイについてなぜ記載しなかったのか、問われて答えに窮していた。
沖縄防衛局や日本の政治家は「沖縄の負担軽減」という言葉をしきりに使う。しかし、普天間基地の「移設」先とされる名護市辺野古区にはすでにキャンプ・シュワブがあり、ほかにもキャンプ・ハンセンや北部訓練場が沖縄島北部地区にはある。基地が何もない場所に「移設」するのではないのだ。すでに基地が過密状態にある場所に、さらに過密にして基地を県内でたらい回しにすることが、政府・防衛省のいう「沖縄の負担軽減」の内実である。
石倉所長は「トータルにみれば沖縄の負担軽減になる」と発言していたが、名護を職場としていながら、二、三年で転勤するヤマトゥンチューには、しょせん他人事でしかないようだ。大の虫を生かすために小の虫を殺す。恩恵は多数派に犠牲は少数派に。そういう論理は基地負担におけるヤマトゥと沖縄の関係を、沖縄内部で再生産するものでしかない。そこには沖縄県民を人口の多い中南部と過疎化が進む北部の南北に分断し、基地反対の声を減殺しようとする政府・防衛省の意図がある。
「沖縄県民の理解を求め、誠実に対応したい」。民主党だけでなく、自民党・公明党の政治家もよく使う言葉だ。だが、環境アセスメントで準備書段階までMV22オスプレイの沖縄配備を隠し、最後の意見書で初めて記載したやり方には、誠実さは欠片もない。沖縄県民の理解を求めたいなら、準備書段階でオスプレイについて記載し、問題点も含めて情報を公開し、説明責任を果たすべきだったはずだ。それをせず、政府・防衛省は名護市民・沖縄県民からオスプレイについて意見を述べる機会すら奪った。
「沖縄県民に理解を求める」と言いながら、自分たちは沖縄県民の意見に耳を傾け、理解しようとしない。そこには、基地による負担と犠牲をあくまで沖縄の中に押し込め、問題が全国に拡散して日米安保体制への問い直しが起こることを防止する、という発想が前提としてある。理解は常に基地負担を受け入れるものとして、沖縄県民が一方的に求められる形である。
沖縄以外の他府県でも、知事や県議会をはじめ全市町村の首長、議会が反対している政策が、ここまで強引に推し進められるだろうか。そう考える沖縄県民は多いだろう。政府・防衛省の姿勢を見て、沖縄差別という言葉がしきりに言われるのも当然である。それは今に始まったことではない、基地政策に関して、政府・防衛省が沖縄に対しとってきた一貫した姿勢である。辺野古新基地建設を許してしまえば、政府・防衛省が沖縄に対しさらに傲慢な姿勢をむき出しにするのは間違いない。
申し入れ終了後、会員で集まり環境アセスメント審査会への意見書を書いた。期間が短い上にインターネットを使えないお年寄りたちの多くは意見書を出せないかもしれない。しかし、この問題が起こってから15年余、辺野古をはじめ各地で地道に運動を続けてきて、子や孫たちにこれ以上の基地被害は与えたくないと、今も強い反対の意志を持っているお年寄りたちがいることを、審査会の委員の皆さんや事務局、仲井真知事は心にとめてほしい。