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札幌地検は不起訴見直しを

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 1月20日付沖縄タイムスに〈 県出身自衛官訓練中死亡/上司の不起訴「不当」/札幌検審「危険強いた」 〉という見出しの記事が載っている。以下に引用する。

〈 陸上自衛隊真駒内駐屯地(札幌市)で2006年、1等陸士の島袋英吉さん=県出身、当時(20)=が格闘訓練中に負傷して死亡した事故で、札幌検察審査会は19日までに、業務上過失致死の疑いで書類送検や告訴された当時の隊長ら上司3人と不起訴とした札幌地検の処分を不当と議決した。議決は18日付。
 議決書によると、事故は06年11月21日発生。真駒内駐屯地で予定の動作に従って相手を投げる訓練中、島袋さんは予定外の投げ技を3回かけられ、頭を強く打ち、翌日死亡した。
 議決理由で審査会は、訓練を命じた隊長について「島袋さんが十分な受け身を取れないと認識していたのに、安全を確保すべき注意義務を怠った」と指摘。訓練を行った上司2人については「習熟度に合わない危険な訓練を強いた」とした。
 札幌地検の広上克洋次席検事は「議決内容を精査し、再捜査をした上、適切に対応したい」とコメントした。
 島袋さんの両親は10年8月、国に9200万円の損害賠償を求めて札幌地検に提訴している 〉

 沖縄タイムスには父勉さんのコメントも載っている。
〈 父「一歩前進」
 父勉さん(51)=沖縄市=は「市民の判断はありがたいと思う。(全容解明に)一歩前進だ。検察が3人をちゃんと調べて真実を明らかにしてほしい」と話し、再捜査に期待を込めた 〉

 この事件については家族がブログで訴えているので、ぜひ見てほしい。

http://inochinoshizuku.blog25.fc2.com/

 また、父親の島袋勉さんは『命の雫』(文芸社)を2009年11月に発刊し、英吉さんが亡くなった状況や家族の苦しみ、英吉さんの思い出、事実を隠蔽して責任を逃れようとする自衛隊への怒りと追及、父親としての苦悩を切々とつづっている。

 同書を読むと3人の上官は、訓練に名を借りた凄惨なリンチを行ったとしか思えない。連絡を受けて両親が沖縄から札幌に駆けつけたとき、英吉さんは次のような状態だった。

〈 英吉の顔をのぞき込んだ。
 顔は二重、三重に腫れ、鬱血も見られた。
 両目は薄く開けられたままで、瞳孔も拡大していた。
 口には呼吸器があてられていたが、自発呼吸があるかどうかも分からない。
《こんな姿になるなんて、何があったというのだ》
 すっかり変わり果てた英吉の異常な顔を見て、私は驚愕した 〉(『命の雫』32ページ)。

 そして、家族は担当医から次のように告げられる。

〈 医務室で私と向かい合って座った担当医は、少し俯き加減で話し始めた。
「最善を尽くしていますが、治る見込みは、ほとんどないと思われます」
 私は巨大な鈍器で頭をガツンと殴られた気持だった。
 担当医は続けた。
「この脳の断面図を見てください。
 普通の脳の数倍に膨らみ、真っ黒になっています。
 血管が切れて、脳中に血が回っています」
 医師に見せられたCTスキャンによる英吉の脳の断面図は、本当に真っ黒だった。八か所もの脳挫傷があるとも説明された。
「運ばれて来た時は、すでに手術できない状態でした。
 低体温治療を施していますが、もし奇跡的に助かっても、生涯が残るでしょう」
 〃死の宣告〃に等しい説明だった 〉(同37ページ)。

 父親が息子の怪我の知らせを受けてからほぼ24時間後、英吉さんは息を引き取る。いったいどのような訓練をやれば、このような状態になるのか。家族は訓練の内容について詳しい説明を求めるが、自衛隊は曖昧な回答しかせず、あくまで訓練中の事故として片付けようとする。それに対して英吉さんの家族は、真相を究明するために現在、札幌地裁に損害賠償を求めて裁判を起こしている。
 今回の札幌検察審査会の決議を受けて、札幌地検はぜひ加害者を起訴し、法の裁きを下すと同時に、英吉さんに加えられた暴力の真相究明と、事件の背景や自衛隊の組織的問題を追及してもらいたい。自衛隊内で発生している暴力やいじめの問題は、たんに自衛隊員や家族だけの人権問題ではない。暴力やいじめが多発し、その事実が軍事機密を盾に隠蔽される時、そのような自衛隊の組織体質は一般市民にも影響を与える。
 今後、同裁判を支援する会が沖縄でも結成されるようだが、広く支援の輪が広がってほしい。

 


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