「現代ビジネス」電子版の「ニュースの深窓」に歳川隆雄氏が〈「反小沢」に動きだした鈴木宗男前衆院議員率いる「新党大地・真民主」の裏側に野中広務の影/カギは普天間問題〉という評論を書いている。特に後半部分を興味深く読んだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/31523
この評論の後半部分は、元外務省職員・佐藤優氏のここ最近の動きを理解するうえで参考になる。辺野古新基地建設を狙って名護の誘致派と面会を重ねている前原誠司民主党政調会長を持ち上げ、琉球新報に新党大地・真民主を売り込む提灯評論を書く。さらに、これまで批判を繰り返していた下地幹郎国民新党幹事長と『週刊金曜日』でにわかに対談する。これら佐藤氏の一連の動きの背景が見えてくる。
鈴木宗男氏−野中広務氏−前原誠司氏という人脈や、新党大地・真民主が積極的に普天間基地「移設」問題に関わろうとしていること。そして、下地幹郎衆院議員が新党大地・真民主に合流する動きがあること。歳川氏が指摘していることは、そのまま佐藤氏の動きに重なってくる。鈴木代表と佐藤氏の深い関係は今さら言うまでもなく、鈴木代表の意を汲んで佐藤氏が動いているのは間違いない。
2月12日に行われる宜野湾市長選挙や6月の県議会選挙、その間にも行われるかもしれない衆議院選挙と、これから普天間基地「移設」問題に影響を与える選挙がつづく。今の沖縄の状況では、辺野古「移設」推進を前面に掲げると選挙に勝つのは難しい。そのために猫も杓子も普天間基地の「県外移設」を唱える。新党大地・真民主も政権与党の立場に立ちながら「県外移設」を主張するというが、その内実はどうか。
小泉元首相流にいえば今や、人生いろいろ「県外移設」もいろいろだ。選挙公約に「県外移設」を掲げながら当選すると180度ひっくり返す者、辺野古は反対と言いながら別の「県内移設」を画策して混乱させる者、辺野古は不可能とは言っても反対とは明言しない者、反対している県民と同じ立場に立っているかのように見せながら推進派・誘致派にも色目を使う者…etc。二枚も三枚も舌がはえた政治家たちの唱える「県外移設」の裏側を、有権者は目を凝らして見通す必要がある。
オール「県外移設」で辺野古「移設」問題の争点ぼかしが行われる一方で、普天間基地固定化が煽られる。そういう中、辺野古「移設」はもう不可能だからそんなに反対しなくていい、むしろ、今のままだと普天間基地が固定化するから、「県外移設」を唱える仲井真知事を「オール沖縄」で応援しよう。そういう馴れ合い的な風潮が広がるのは危険である。
辺野古以外の基地政策、日米安保体制や自衛隊に対する認識、対応の違いを不問に付して「オール沖縄」が成り立つかのようなナショナリスティックな幻想を抱くのは、反対運動にとって自滅行為でしかない。普天間基地の辺野古「移設」は高江のオスプレイパッド建設、先島地域への自衛隊配備と一体のものであり、切り離すことはできない。それらを合わせて問えば、「県外移設」の内実も自ずから見えてくる。
「オール沖縄」や「保守も革新もない」という物言いは、そういう内実の違いを隠蔽する政治的用語である。有権者にとって大切なのは、そういう耳に聞こえのいい用語で馴れ合うのではなく、個々の政治家の内実を露呈させ、違いを明確にさせる問いを発することである。